天然グリセリンの専業メーカーで、RSPOサプライチェーン認証取得企業である阪本薬品工業では、人体や環境にやさしいサステナブルな原料で食品や医薬品など幅広い産業で用いられる安全性の高い植物由来のグリセリンをベースとしたポリグリセリン脂肪酸エステルなどの各種誘導体を中心に、優れた機能と使用感を両立し、新たな価値を生み出す化粧品原料の提案に注力している。
複数のグリセリンが重合した構造を持つポリグリセリンは、べたつきを抑えながら高い保湿力を付与する保湿剤として一般的に広く認知されているが、重合度の違いによってエモリエント感やハリ(被膜)感など異なる使用感を付与することができ、感触調整剤としても用いることが可能だ。
そのため、同社では高保湿化粧料の開発において想定される「しっとりさせるとべたつく」「どれもよく似た感触になりそう」「オイルフリー処方でもエモリエント感は欲しい」といった課題や困りごとを解消すべく、使用感が異なるポリグリセリンの3原料(ジグリセリンS(表示名称=ジグリセリン)/PGL-S(同=ポリグリセリン-3)/ポリグリセリン#750(同=ポリグリセリン-10、水))を軸に、多彩な感触をもたらす高保湿のポリグリセリンを提案している。
まず、保湿効果については、グリセリン10%とBG5%を配合した化粧水のベース処方に、ジグリセリンS(ジグリセリン)、PGL-S(ポリグリセリン-3)、ポリグリセリン#750(ポリグリセリン-10)をそれぞれ3%配合し、60分後の角層水分量の変化をCorneometerで測定した。
その結果、ジグリセリンとポリグリセリン-3、ポリグリセリン-10が入ることで、いずれも保湿性がアップした(図1)。
次に、感触調整剤としての機能性について、ジグリセリンSは、0.5%の少量配合でグリセリンのべたつきを抑制し、配合量によってさっぱり系からしっとり・高保湿まで幅広い使用感をもたらす。
PGL-Sは、高配合してもべたつかず、エモリエント感を付与する。同原料は2019年から国内での販売がスタートし、「ジグリセリンと比べて歴史は浅いが、着実に採用実績が積み上がってきている」(同社)という。
ポリグリセリン#750は、0.5~3%の少量配合でリッチ感やコク感、ハリ感(被膜感)を付与することが官能評価(図2)にて確認されており、CITE JAPAN 2023から保湿剤・感触調整剤として新たに提案している。
「ハリ感を与える時の感触調整剤では、石油由来成分であるPEG(ポリエチレングリコール)-400を使用されるケースが一般的に多いが、化粧品業界では近年、オーガニックやサステナブルな処方開発の需要が高まっており、PEGフリー処方がトレンドとなっている。当社ではこれまで、PEGフリー処方を実現するための乳化剤としてポリグリセリンを提案してきた。しかし、CITE JAPAN 2023では乳化剤だけでなく、感触調整剤でもPEG代替のニーズに対応できる点をアピールし、高保湿でありながらも乳化安定性と使用感に優れたPEGフリーのアプリケーションを提案した」(同社)
感触調整剤の処方例としては、PGL-S15%配合でべたつかずに高保湿性とエモリエント感を付与し、コクのある伸びの良い「モイスチャーセラム」と、ジグリセリンS(5%)・PGL-S(3%)・ポリグリセリン#750(1.5%)の3製品を組み合わせ、濃厚な使用感で透明な外観の「濃厚ローション」を紹介した。
「当社のグリセリン及びポリグリセリン脂肪酸エステルは、植物由来のグリセリンを原料としていることから、環境に優しいサステナブルな素材として注目を集めている。サステナブルな社会の実現のため、2021年1月に開設したアプリケーションラボでは、グリセリン及びグリセリン誘導体を用いた新たな価値を創出する処方の開発に加え、研究開発で得られた最先端の皮膚科学の知見に基づいた情報発信も行っている。また、使用感の評価や新たな処方開発の提案などが好評を得ており、今後も安心して使用してもらえる原料の提供に努めるとともに、専任研究員が専門知識に基づき、様々なアプリケーションにおいて最適な機能・処方提案を行い、お客様の製品開発をより一層サポートしていく。サステナブルな化粧品処方の開発で何か課題が出た際、アプリケーションラボから課題解決の糸口となる情報を提供していき、お客様から化粧品の処方開発で最初に相談してもらえるような存在となることを目指していきたい」(同社)