化粧品・トイレタリー容器メーカーのツバキスタイルでは、容器大手のグラセルも資本参加する「BEAUTYCLE」にて、化粧品・トイレタリー容器の水平リサイクルを推進している。
2023年5月には、佐賀県神埼市に「BEAUTYCLE 佐賀工場」を竣工した。検査体制を充実させ品質にこだわっており、FDA(米国食品医薬品局)の認証を受けた機械を導入している。
PP容器は、リペレットしてもにおいが残りやすい傾向にあるが、佐賀工場では押出機にリフレッシャー設備を導入しており、実際に稼働させたところ、脱臭することができたという。
BEAUTYCLEの取り組みに賛同した新日本製薬とは、使用済容器を店頭で回収し、水平リサイクルによって同じ容器に再生させる「パーフェクトワン リサイクルプログラム」を実施した。まずはツバキスタイルとグラセルの既存顧客を中心にスタートしており、現時点で既に約10社が決定しているという。
23年8月には、無添加石けんのパイオニアであるシャボン玉石けんと北九州市立病院機構 北九州市立八幡病院との3社間における取り組みを発表している。
シャボン玉石けんのハンドソープ「手洗いせっけんバブルガード」は、北九州市立八幡病院内で利用されているが、病院という衛生管理がより必要とされる環境のため、詰め替え用の商材は使用せず、使用後はボトルごと処分し、新しい商品を使用するというフローをとっていた。
今回の取り組みでは、使用済みボトルを佐賀県内のBEAUTYECLE工場にてリサイクルし、新たな「手洗いせっけんバブルガード」として生まれ変わらせる。そして、病院での回収スキームを構築し、今後は他の病院でも展開していく方針だ。
さらに、東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が運営し、2023年5月に東急歌舞伎町タワー内に開業した「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」における取り組みもスタートしている。使用されているホテルオリジナルのバスアメニティボトルを使用後に回収、再利用する。
これまでのホテルのアメニティグッズは、廃棄前提で作られることも多く、中でもバスアメニティは大量のボトルが廃棄されることがホテル業界全体の課題となっていた。一方で、BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel のバスアメニティは、捨てられていた国際原料を活用した、同ホテルオリジナルのオーガニック商品として開発されたが、容器に関する課題が残っていたという。
プラスチック業界における環境対応を重要視し本取組を実施しているBEAUTYCLEと、ホテルのアメニティグッズ廃棄問題解決に努めていた BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel、双方の想いが合致し、取り組みが実現することとなった。
なお、大手メーカーの製品を取り扱う工場では、廃棄ロスが問題となっており、コスト面を大きく圧迫している。そうした問題の解決策としても同社の水平リサイクルは注目を集めている。容器に美しさが求められる化粧品、トイレタリー業界における水平リサイクルの取り組みは非常に革新的であり、多くの企業から引き合いがあるという。
さらに、リサイクルのニーズが世界的に拡大し続ける中で、リサイクル業界においては専用機械が不足しているといい、同業他社となるリサイクラーからの相談も増加傾向にあるようだ。
「脱プラ・減プラの流れが年々強まる中で、容器製造業は厳しい状況に置かれており、環境配慮の流れに適応できなければシュリンクしていくものとみられる。ただ、化粧品・トイレタリーに関しては、リピート購入は詰め替え用で問題ないものの、初めて触れる商品に関しては容器の美しさが強みとなるため、販促面でプラスチック容器は必要だと考えている。水平リサイクルの取り組みによって環境への負担を減らすことで、プラスチック容器をこれからも残していきたい」(代表取締役社長 杉山大祐氏)
自治体や九州に拠点を持つ企業とのアライアンスも進んでおり、地方の雇用を増やすといった意味でも、同社のリサイクル事業は注目を集めており、環境問題へのアプローチだけでなく、地方創生にもつながっていきそうだ。
同社はこれまでキャリア採用を中心に人材を強化してきたが、最近では高校からの新卒採用に関する問い合わせが急増しているといい、今後は新卒採用も検討する方針だ。
「今回の水平リサイクルの取り組みは環境へ貢献することはもちろん、厳しい状況下でシェアを獲得していくためのフックでもあり、当社の企業価値向上につながるだろう。リサイクルPETやバイオ樹脂を容器の素材として使用することは何年も前から行われてきたが、自分たちの出したゴミをリサイクルする循環型のモデルを確立できれば、業界としてもう1つ上のステージに行くことができるのではないか。他社と連携していきながら、水平リサイクルを業界のスタンダードにしていきたいと考えている」(杉山氏)