化粧品・トイレタリー容器メーカーのツバキスタイルでは、容器大手のグラセルも資本参加する「BEAUTYCLE」にて、化粧品・トイレタリー容器の水平リサイクルを推進している。これまで、化粧品・日用品メーカー、病院、ホテル業界まで、様々な企業と取り組みを実施してきた。
今後は、共通の循環型ビジネスプラットフォームとして複数社とアライアンスを組み、工場で発生する廃棄ボトルを一手に回収、効率よく水平リサイクルするプロジェクトも進める予定で、OEMメーカーをはじめ、多くの企業から関心が寄せられている。
化粧品・日用品からホテル業界まで
取り組み事例の情報発信も強化
ツバキスタイルは、早い段階からSDGsの理念に合致した環境対策容器の提案に注力してきたが、2022年4月より循環型リサイクルシステムの構築に本格的に着手、今年5月には、「BEAUTYCLE 佐賀工場」を竣工した。化粧品・トイレタリー容器において、「回収・洗浄・粉砕・樹脂化・容器として再生」というフローで、水平リサイクルを実現している。
情報発信にも力を入れており、新日本製薬との「パーフェクトワン リサイクルプログラム」を皮切りに、取り組み事例を紹介してきた。
今年8月には、シャボン玉石けんと北九州市立病院機構 北九州市立八幡病院との3社間における取り組みを発表している。シャボン玉石けんのハンドソープ「手洗いせっけんバブルガード」は、北九州市立八幡病院内で利用されているが、衛生管理がより必要とされる環境のため、詰め替え容器を使用せずに使用後はボトルを廃棄していた。
そうした中、同社が使用済みボトルを回収して水平リサイクルすることで環境負荷を軽減しており、今後は他の病院でも展開していく方針だ。
東急歌舞伎町タワー内に開業した「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」とは、ホテルオリジナルのバスアメニティの水平リサイクルを実施、ホテル業界では初の取り組みとなる。ホテルのアメニティグッズは廃棄前提で作られることも多く、中でもバスアメニティは大量のボトルが廃棄されることが業界全体の課題となっていたことから、今回の施策がきっかけとなって、他社へも波及していくことが期待される。
複数社とアライアンスを組み
各工場の廃棄ボトルを集める
これまでは1社ごとに取り組みを行ってきたが、今後については、共通の循環型ビジネスプラットフォームとして参加企業を募り、廃棄ボトルを一手に回収して原料化、各社の製品への水平リサイクルするプロジェクトも進めていく。
そうした中で、現在、OEMメーカーからの問い合わせが増えているという。OEMメーカーにおいては、充填時のトラブルなどを見越して多めに容器を仕入れるため、大規模な廃棄ロスの発生が問題となっている。特に大手メーカーの製品を取り扱う工場ではその規模も非常に大きい。廃棄ロスとなったボトルは、産業廃棄物として処理されるため、コスト面を大きく圧迫しており、OEMメーカーにおいては近々に解決しなければならない経営課題の一つとして挙げられている。
代表取締役社長の杉山大祐氏は、「実は共通プラットフォームの構想は昨年から既に提案を行っていたが、半信半疑の反応が多かった。一方で、ある程度事例をつくっていけば、必ず興味を持っていただけるだろうという確信があった。メディアでの露出強化や、プレスリリースを通じた事例紹介などを地道に行い、現在では当社の取り組みの認知も高まってきており、大手から中小企業まで、多くの問い合わせや工場見学の依頼をいただいている。将来の環境改善に向けては業界が一丸となって取り組む必要があり、循環型ビジネスプラットフォームの構築で、水平リサイクルの取り組みを一気に拡大させていきたい」と語る。
共通プラットフォームの構築は、BEAUTYCLEの水平リサイクル事業の収益性を高めるためにも、必要不可欠な施策といえる。複数社とのアライアンスで一気にたくさんの廃棄ボトルを集め、効率的に水平リサイクルすることで、取り組みをより継続的なものにすることができるだろう。
中長期的には新工場の構想も、
体制強化に向けて新卒採用検討
同社の水平リサイクル事業は、化粧品業界や日用品業界へ大きな変化をもたらすことが期待される。
飲料以外のプラスチックを細かく分別するなど、ごみ分別の実証実験を行っている自治体も存在し、そうした施策を通じて、一般消費者の意識も少しずつ変化していくものと考えられる。ごみ分別がより細分化されていくことで、化粧品・日用品業界における水平リサイクルの取り組みもさらに進歩するのではないか。
なお現在、多数の引き合いや進行中の案件があることから、中長期的な目標として、佐賀に次ぐ新工場の建設も検討している。BEAUTYCLEは佐賀、ツバキスタイルとしては埼玉に工場を持っているため、物流の側面も考慮しながら、検討を進めていく。
また、これからますます事業が拡大することが予想される中で、人材面の体制強化も今後の課題の一つといえる。同社はこれまで、キャリア採用が中心だったが、今後は新卒採用を行っていく方針だ。
自治体や九州に拠点を持つ企業とのアライアンスを推進していることから、地方の雇用を増やすといった意味でも注目を集めている。自治体や佐賀エリアの工業高校から、新卒採用に関する問い合わせが多数寄せられているといい、1月には高校生向けの工場見学会を実施するという。同社の取り組みは、環境問題へのアプローチにとどまらず、地方創生にもつながっていきそうだ。
「来年には、先述の循環型ビジネスプラットフォームの構築を完了させ、佐賀工場の稼働率を高めていく。サステナブルの潮流が高まる中、化粧品・トイレタリー容器におけるさらなる環境対応は必須事項であり、当社の取り組みは時流と非常にマッチしている。企業としても大きな成長の過渡期であると考えており、ソフト面・ハード面ともに強化しながら、提案を強化していきたい」(杉山社長)