今年で創業110周年を迎えた碌々産業(本社=港区、海藤満社長)は、超高精度高速微細加工機をはじめ、特殊加工機やプリント基板加工機といった工作機械の製造・開発・販売を行っている。
同社は微細加工機のリーディングカンパニーとしても知られ、国内では金型メーカーや半導体関連企業への導入実績を持つ。
微細加工機では、見る角度によって異なる模様が見え隠れする「潜像加工」を金属製容器に施すことが可能だ。
さらに、この微細加工機は機械の切削だけで加工面の平均粗さ(Ra)がシングルナノ(10以下)レベルの「鏡面仕上加工」にすることが可能なため、手磨きの工程を簡略化することができる。
同社によると、近年は電子機器や半導体のメーカーが機能性だけでなく、デザインの美しさも重視する傾向にあり、金型に求められる機能として、加工した面の粗さが少ない「鏡面仕上加工」へのニーズが高まっている。
しかし、従来の金型加工では機械である程度仕上げた後、金型の最終仕上げとして手磨きが行われるため、手磨きで金型の形状をμmレベルまで均一にすることは難しい。そのため、粗さを極小レベルまで抑えることに成功した同機に対し、海外を中心に電子機器・半導体メーカーから支持を集めている。
一例として、米国大手IT企業のA社ではスマートフォンの筐体(きょうたい)やイヤホン、カメラといった電子機器の金型を加工する際に微細加工機が採用されているほか、スイスの高級時計メーカーでは時計の機械部分(ムーブメント)の加工に同機が使用されている。
「こうした、電子機器や高級時計に使用される高精度の鏡面仕上加工を新たな分野で応用できないか常々検討していた。そこで着目したのが、デザイン重視の共通項がある化粧品容器への金型加工の提案だった。微細加工機ではこうした加工技術のみならず、金型に細かな彫刻を施すことも可能であり、化粧品容器の幅が拡がるものと期待している。今後は化粧品業界に向けて新たな金型加工技術の提案を積極的にアピールしていく方針だ」(海藤社長)
同社では化粧品容器分野での事業展開を推進するべく、先月行われた「化粧品開発展」に初出展し、ブースでは他分野で活用されている「鏡面仕上加工」「潜像加工」を施した金型を実際に紹介したほか、化粧品容器の新たな提案として鏡面仕上加工を施したアルミ材の「化粧コンパクト」を披露した。
展示会ではこのほか、「超硬合金への鏡面仕上」「ダイヤモンドカットへの鏡面仕上」といった加工技術の提案もあわせて行った。
「近年は金型の耐久性を考慮し、金属よりも硬い超硬合金を使用する流れにある。しかし、従来の加工法では切削する工具自体が超硬合金のため、超硬合金の金型加工は困難だった。そこで、独自の工具コーティング加工技術を開発し、超硬合金への鏡面仕上げを実現した。こうした、当社が持つ金型加工技術をこの業界で認知を高めていきたい」(海藤社長)
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この記事は週刊粧業 掲載
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