化粧品OEM業界の国内大手のトキワは、化粧品の処方と容器の同時開発を行う独自性を活かした新規事業として、小ロット・スピード開発・製造を実現する専用ラボ「APD Lab.(APDラボ)」を立ち上げ、インフルエンサーやKOLなどが企画プロデュースするP to Cブランドやスタートアップ企業との接点拡大・関係強化を図っている。
APDラボでは、独自開発してきた技術や処方をデータベース化しており、市場ニーズや顧客の要望に合わせて有効活用することでスピード開発を実現する。
2022年11月期は、日本や米国を中心に事業の柱であるプレステージ、マステージ向け製品の受注回復が見られ、半期を終えて、売上高は前年同期比2ケタ以上の伸長率で推移した。新規受注案件も獲得し、昨年竣工した瑞浪工場(岐阜県)の稼働率も既に8割を超えているという。
金井博之社長は、「回復には時間がかかると見ていた欧州も2ケタ以上の伸び率で推移している。今後も海外は、アイライナー、アイブロウなど得意とする開発分野でOEMシェアを高めていく」と話す。
同社の主要製造品目は、アイメーク関連製品だが、リップやマスカラ、パウダー製品などカラーメイク全般で様々な開発技術を保有している。APDラボではそれら知財を有効活用することで、オリジナルコスメのスピード開発を実現する。
金井社長は、「あくまで中核事業は、グローバル大手のプレステージブランドやマステージブランドのカラーメイクを中心とした受託開発・製造だ」とした上で、APDラボを軸にした新規事業を通じて、独自の開発力を持つ『トキワだからできること』『トキワにしか実現できないこと』をさらに磨き上げ、OEM製品のポートフォリオの拡充につなげていきたい」と話した。新規事業でのナレッジやノウハウは中核事業にも活かし、カラーメイク全般でOEMシェア拡大を目指す。
新規事業への取り組みは19年にカーライル・グループの傘下になって以降、推進されており、同時に社内改革も進む。
金井社長は、「成長の陰には無理や無駄が付きもの。無理や無駄が嵩めば、ムラも生じる。コロナ禍になってカラーメイク市場は落ち込んだが、2010年代を振り返れば、業界の伸長とともに、当社もその10年間で大きく成長してきた結果、ムダ・ムリ・ムラが蓄積されてしまった」と述べ、引き続き、社内の業務改革や社員の意識改革に取り組んでいく考えだ。
「改革に取り組む姿勢として『腹落ち感』が重要だと考えている。各部署の管理職クラスが中心となって、腹落ち感を持ってムダ・ムリ・ムラの減少に取り組み、成長ステップを踏んでいきたい」