粧業日報 2024年5月29日号 1ページ
カンタンに言うと
化粧品OEM/ODM国内最大手の日本コルマー(本社=大阪市、神崎義英社長)は6月1日付で、社名を「TOA(トーア)株式会社」に変更し、企業の理念やシンボルマークを新たに策定した。社名変更に合わせて本社も移転した。
新社名のTOAは「Total Outsourcing Access」の頭文字からなり、新たな企業理念として「ヨロコ美とともに」を掲げた。企業理念を明確化して新たな成長ステージを目指す。以下は、5月9日に開催された社名変更記者発表会での神崎社長の発言要旨である。
6月1日をもって「TOA株式会社」に社名を変更する。また同日付で本社を移転する。
当社は1912年(大正元年)に、「金陵園」という名で化粧品製造業を創業した。
「金陵」は、創業者・神崎義臣の出身地である香川県の有名な日本酒のブランド名であり、将来、金陵のように全国的に知れ渡る会社になりたいという願いを込めて社名に取り入れたと伝え聞いている。創業当初は自社ブランドの製造・販売を行ってきたが、第2次世界大戦末期の大阪大空襲で本社工場が焼失し、戦後、ゼロから再出発するタイミングで、化粧品の受託製造に特化する経営方針に舵を切った。
68年には、当時世界最大の化粧品OEMグループだった米国のコルマーラボラトリーズ社(以下、米国コルマー社)と業務提携契約を締結し、ライセンシーとして技術力の向上を図ってきた。業務提携は、技術供与を受けるだけでなく、海外の顧客を紹介していただくことも目的としていた。当時の日本は貿易自由化が進み、海外から様々なものが入ってきていた時代でもあった。米国コルマー社とは良好な関係を築き、72年に社名を金陵園から「日本コルマー株式会社」に変更した。
その後は化粧品業界の発展とともに、順調に事業を拡大し、90年代後半には技術力も業績も米国コルマー社を凌ぐ水準に成長していた。その頃から、米国コルマー社とは、ビジネスパートナーとして共同でグローバル展開を目指すプロジェクトを立ち上げ、数年にわたって検討を進めたが、実現には至らず、提携を発展的に解消するに至った。解消後、社名変更の件は頭の片隅にあったが、OEM/ODMという事業の性質上、社名を変更することで、当社が製販元となっているお客様には多大なご迷惑をおかけすることになる。思い切った決断ができずに二十数年が経った。
今回の社名変更は、ビルの建て替えが昨春に決まり、本社を移転せざるを得ない状況となり、そのタイミングならば、ということで決断に至った。
「TOA」は「Total Outsourcing Access」の頭文字から取った。「Total Outsourcing」には、化粧品の様々な業務委託の形態に一括して応えていきたいという想いを、「Access」には常に安心、信頼してアクセスしていただける会社であり続けたいという想いを込めた。新たなステージへ進むにあたり、会社として大切にしたい理念も策定した。
新しい理念「ヨロコ美とともに」は、「喜び」と「美」を重ねた造語(ヨロコ美)に、「ともに」を添えた。私たちは創業以来、変わらず「美」と「健康」を通してお客様に「喜び」を届け続けてきた。全ての利害関係者に配慮した経営が求められる時代に、これからも社会や人々に喜びを届けながら、ともに歩んでいきたいという願いを込めた。
企業シンボルマークは、その願いを可視化した。様々な業務委託の形態に一括して応えるトータルアウトソーシングを実現するため、当社自身がグローバルな視点に立ったサステナブル経営を進めていくという姿勢を表している。シンボルマークの「T」は水平、垂直からなる力強い造形で表し、「O」は「地球」に見立て、グローバルな視点でのTotal Outsourcingを実現し、サステナブル経営を推進していく姿勢を表現した。「A」は躍動感のある動きにデザインすることで、幅広くAccessできる体制を表している。青のグラデーションは、知的でクリーンな企業であり続けることを誓うカラーとして選んだ。
企業キャラクターとして「TOAちゃん」も作成した。私たちは、お客様の多種多様なニーズに応える化粧品の中身を開発・製造するため、アイデア、発想といった創造力や想像力を大切にしている。
ひらめきが生まれる瞬間を一滴のしずくと捉え、水滴に見立てた。水滴が落ちた時に広がる波紋がやがて地球を包みこむ。水滴のような役割を担っていきたい。そのような想いをTOAちゃんに込めている。
新社名のもと、社員一丸となって新しいことにチャレンジし、全ての社員が笑顔で活躍できる会社を一緒に築いていきたい。
継承と変化、前向きな姿勢を育み成長持続へ
新社名の発表後は、記者団の取材に応じた。記者団の主な質疑応答は次のとおり。
――社名変更後も変えずに守り続けたいことは。
神崎 化粧品OEM/ODMの事業形態は今後も守り続けていく。過去には美と健康の領域として、医薬品や健康食品の分野でOEM事業の展開を検討した時期もあったが、どの業界にも既に優れたOEM/ODM会社がたくさん存在する。
当社は化粧品分野でスキンケアからメークアップ、ヘアケアまで幅広い品目の開発・製造が可能な体制を築いているが、まだ十分でない部分がある。そこをさらにもっと強くしていきたいと考えている。
先代から受け継がれてきた社風も継承していきたい。インターンシップや面接に来られた学生へのアンケートでは、アットホームな雰囲気の会社という評価をいただくことが多い。工場見学に来ていただくお客様からも同じようなコメントをたくさん頂戴している。
また幅広い柔軟な対応力にも高い評価をいただいており、お客様の要望やモノづくりに対して真摯に取り組む考え方や姿勢は大事な社風のひとつと捉え、受け継いでいく。そうした考え方や姿勢は、設備投資を惜しまず、技術力の向上に努めてきたことで培われたものでもあると思う。そうした積極的な投資意識も変わらず持ち続けていきたい。
――反対に、変えていこうと考えていることは。
神崎 時代の変化に柔軟に対応できる会社であり続けるために、企業体質や社員の意識などは環境の変化に合わせて変えていかねばならないと考えている。
成長とともに工場、研究所を増やし、現在、国内7工場・5研究所体制で社員数も2000名を超える規模となったが、40年前の頃のようなトップダウン型の体質が残っており、このままでは大企業病に陥り、当社の強みである柔軟性が失われてしまう可能性もある。
これからは、ボトムアップ型で社員からの様々な意見や提案を吸い上げ、前向きな姿勢で失敗を恐れず、新しいことにチャレンジし続けられる環境を整えていきたい。
――直近の業績と中長期の成長戦略は。
神崎 2024年3月期は、アフターコロナに入ったことでメークアップの受注回復が力強く、また高価格帯を中心としたヘアケアの受注好調が続き、売上高が前期比14.1%増の635億8000万円で20期連続の増収を達成することができた。
今期(2025年3月期)は売上高660億円(前期比3.9%増)を目指す。2期連続で計画を大幅に上振れしたこともあり、中長期の売上目標は立てないが、化粧品OEM/ODM業界はまだ成長が期待できるので、当社も持続的な事業成長を目指していく。
――関東の生産拠点がある結城(茨城県)では、新工場の建設が進んでいます。どのような工場か。
神崎 結城工場から車で5分ほどの工業団地内に、地上4階建の工場を年内に竣工する。スキンケアやヘアケアなどの液体化粧品、危険物製品に対応する工場として25年春の稼働を計画している。
新工場を結城工場とし、現在の結城工場を結城第一工場に名称を変更する。危険物対応は、広島工場に続いてとなる。消防法の規制が化粧品も厳しくなってきているので、需要は今後増えてくると見ている。
建設中の新工場も含め各工場では、人手不足の問題を解消していかねばならない。化粧品の製造は多品種・少量生産が中心のため、全自動化は現実的に難しい。部分的に作業を自動化するロボットの導入などトライ&エラーを繰り返しながら省人化・省力化にチャレンジしていく必要があると考えている。
――海外の子会社(生産拠点)は社名変更をするのか。
神崎 中国は、社名変更の手続きが煩雑のため、科瑪化粧品(蘇州)有限公司と科欧瑪化粧品(杭州)有限公司は現社名を継続する。コルマーベトナムも当面、現社名のままで営業する。
――海外事業の状況は。
神崎 中国は、韓国系や欧米系のOEM企業も苦戦しているが、日系企業は昨夏以降、そこに処理水の問題が重しになっている。それまで多少値段が高くても、安心・安全、品質の高さで受注を獲得できたが、中国国内のローカルブランドの台頭や法規制により難しい対応を迫られている
コルマーベトナムもコロナ禍に竣工した影響もあり、立ち上げは苦戦している。東南アジアの化粧品市場がもっと大きくなってくれば状況は変わってくると思う。
現時点では日本国内でしっかりとお客様からの様々な要望、ニーズに応えていくことが重要であると考えている。
茨城・結城の新工場
この記事は粧業日報 2024年5月29日号 1ページ 掲載
■日本コルマー、TOA(トーア)に社名変更~新たな成長ステージへ◎継承と変化、前向きな姿勢を育み成長持続へ■エムズサイエンス、将来見据え多様な世代の社員を採用■KCMK、「えらぼう。未来につながる今を」フェアに参画
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